重度外傷,脊髄損傷,熱傷における静脈血栓塞栓症の予防


重度外傷

  1. 重度外傷,特に,多発外傷,意識障害の遷延する頭部外傷,運動麻痺を伴う脊椎骨折や脊髄損傷,重症骨盤骨折,多発性または複雑な下肢骨折は,静脈血栓塞栓症の高リスク群である。
  2. 主要臓器損傷があり,止血が完了していないか再出血による合併症が懸念される時期においては,弾性ストッキングの着用や間欠的空気圧迫法を行う。
  3. 下肢の外傷などで機械的な予防ができない場合は,出血の危険がなくなり次第,低用量未分画ヘパリンを開始する。
  4. 抗凝固療法の禁忌となるような出血がない場合,高リスク群では受傷部位の一次止血が確認されれば,低用量未分画ヘパリンを開始する。一次止血が確認されるまでの期間,および抗凝固療法が禁忌の場合には,弾性ストッキング装着や間欠的空気圧迫法を施行する。

脊髄損傷

  1. 脊椎周囲に血腫のある場合は,出血が持続しているおそれがある場合は,止血が確認されるまでは抗凝固療法は禁忌である。
  2. 脊髄損傷患者は知覚障害があるため,長期の間欠的空気圧迫法の使用は潰瘍などの皮膚障害を引き起こす可能性があり,避けるべきである。
  3. 静脈血栓塞栓症の予防は可能な限り続ける必要がある 。

熱 傷

熱傷患者の静脈血栓塞栓症の予防に関するエビデンスは乏しいが,下肢外傷,高齢,広範囲の熱傷,肥満,長期臥床,中心静脈カテーテル留置などの危険因子が存在する場合には,その予防を検討すべきである。



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