産科領域における静脈血栓塞栓症の予防


  1. 静脈血栓塞栓症の家族歴・既往歴,抗リン脂質抗体陽性,肥満・高齢妊娠等の帝王切開術後,長期安静臥床(重症妊娠悪阻,卵巣過剰刺激症候群,切迫流早産,重症妊娠中毒症,前置胎盤,多胎妊娠などによる),常位胎盤早期剥離の既往,著明な下肢静脈瘤などは,高リスク妊婦と考えられる。
  2. 合併症その他で長期にわたり安静臥床する妊婦に対しては,ベッド上での下肢の運動を積極的に勧めるが,絶対安静で極力運動を制限せざるを得ない場合は弾性ストッキング着用あるいは間欠的空気圧迫法を行う。
  3. 長期安静臥床後に帝王切開を行う場合には,術前に静脈血栓塞栓症のスクリーニングを考慮する。
  4. 静脈血栓塞栓症の既往および血栓性素因を有する妊婦に対しては,妊娠初期からの予防的薬物療法が望ましい。未分画ヘパリン5,000単位皮下注射を1日2回行う。ワルファリンは催奇形性のため,妊娠中は原則として投与しない方がよい。分娩に際しては,陣痛が発来したら一旦未分画ヘパリンを中止し,分娩後止血を確認後できるだけ早期に未分画ヘパリンを再開し,引き続きワルファリンに切り換える。



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